ビットコインなどで有名な仮想通貨には、法定通貨にはない魅力がある一方で、価格変動リスクが大きいというデメリットや課題を抱えています。
いくら国際送金をするにあたって便利だからといって、送って早々に大暴落をするような通貨では、怖くてとても海外送金に用いることができないでしょう。
テザー(Tether)は、そんな為替変動リスクがあるという課題について、一つの解答となりえる仮想通貨です。
今回はそんな仮想通貨の一つであるテザーについて解説します。
テザー(Tether)とは?
通貨名 | USDT |
通貨タイプ | ERC20トークン |
発行上限 | なし |
リリース | 2014年10月6日 |
公式サイト | こちら |
ホワイトペーパー | こちら |
テザー(Tether)とはTether社が発行した仮想通貨の一種であり、通貨単位はUSDTです。2015年2月に発行された仮想通貨で、供給量に上限はありません。
テザーは、米ドルとペッグ(米ドルの相場に固定)しているステーブルコインとして有名ですが、Tether社はそれ以外にも、ユーロとペッグしているユーロ・テザーも発行しています。
ステーブルコインとは、価格が安定している仮想通貨のことで、ビットコインのようなボラティリティが大きい仮想通貨とは対極に位置している通貨です。
テザー(Tether)の特徴は?
かつて仮想通貨といえば、ビットコインがその代表格でした。そのため、仮想通貨というと、価格が不安定で、ボラティリティが大きいというイメージが付きがちだったのですが、テザーは違います。
米ドルとペッグしているテザーの場合、1USDTの価値は常に1ドルとなります。いついかなる時であっても、1USDTの価値が1ドルになるように保証している通貨となりますので、利用者としては価格変動リスクに悩まされないというメリットがあります。
もちろん、テザーの価格が変動せずとも、米ドルの価格が変動すれば、その影響をテザーが受けることになるでしょう。
ただ、ビットコインの荒々しいボラティリティと比較すれば、米ドルの価格変動リスクは非常に低いので、テザーならば価格変動リスクに悩まされることなく利用できます。
ビットコインのような価格変動リスクが大きすぎる仮想通貨だと、おちおち国際送金に用いることができません。しかし、テザーならば常に米ドルと同じ価値になるように保証されているため、安心して送金に用いることができます。
テザー(Tether)の仕組み
常に1ドル=1USDTになるように保証してくれるテザーなのですが、一体どのような仕組みならばドルの価値を保証できるのでしょうか?
テザーでは、1ドル=1USDTの価値を保証するために、プルーフ・オブ・リザーブという仕組みを採用しています。
プルーフ・オブ・リザーブとは、テザーの新規発行のシステムのことです。
例えば、ユーザーがテザーを購入した際、ユーザーが1万米ドルでテザーを購入するとなると、Tether社は1万USDTを新規発行することになります。
その結果、Tether社の口座には現在、ユーザーが預けた1万米ドルがあるため、新規発行された1万USDTの価値を保証することができます。
このように、テザーが新規発行され、市場に流通されるためには、それと同等の価値を持つ法定通貨が必要となる仕組みがプルーフ・オブ・リザーブとなります。
プルーフ・オブ・リザーブの仕組みを採用している以上、常に市場に流通しているUSDTと同価値の法定通貨があるわけですから、Tether社は1ドル=1USDTの価値を保証することができるのです。
プルーフ・オブ・リザーブの仕組みが正しく機能している限り、テザーは常に米ドルをペッグできます。
それどころか、法定通貨が価値の裏付けをしているわけですから、今後テザーの価値が無くなる心配がなく、常に価値のある仮想通貨として使用することができるなどの利点があります。
世の中には多くの仮想通貨が存在しますが、その中でテザーに関して言えば、今後とも価値がなくなることはないでしょう。
※米ドルなどの法定通貨の価値がなくならない限り
ビットコインと違って価格変動リスクが無く、米ドルによる価値の裏付けがなされているテザーは長期保有がしやすい仮想通貨です。
Tetherの課題
価格変動リスクがないテザーですが、まったくリスクがないわけではありません。テザーにも、克服するべき課題があります。それは、カウンターパーティーリスクです。
カウンターパーティーリスクとは、金融の世界では、デリバティブ取引における相手方が破綻するなどして契約が履行されないリスクのことを呼びます。
仮想通貨は、誰かが価値を保証しているモノではないので、取引所が全滅すると、仮想通貨を売りたくても売れず、価値が無くなってしまうリスクがあります。もっとも、世界には多くの仮想通貨取引所があるため、一つや二つの取引所が破綻しても、仮想通貨の価値が無くなることはないでしょう。
しかし、テザーは違います。
というのも、ビットコインなどの管理者がいない仮想通貨と違って、テザーにはTether社という管理者がいるからです。
そもそも、テザーが1ドル=1USDTの価値を保証できるのは、偏にTether社がその価値を裏付けられるだけのドル資産を持っているからです。つまり、Tether社が破綻し、裏付けのための資産が無くなってしまった場合、テザーの価値は消滅してしまうということです。
このように、カウンターパーティーリスクをどうやって克服するべきかという課題をテザーは抱えています。
Tether社が国の政府組織であれば、将来破綻するリスクは限りなく少ないでしょう。しかし、Tether社は民間の企業なだけに、どうしても破綻のリスクが付いて回ります。
この課題を解決するためには、Tether社が破綻しないように、経営努力をする必要があります。
Tetherの疑惑
ビットコインの課題の一つである為替変動リスクがないということで人気を集めているテザーですが、2018年以降より、その信頼が揺らぎかねない疑惑が浮上しています。
それがいわゆるテザー疑惑です。
テザー疑惑というのは、テザーの価値は本当に1ドル=1USDTなのか、実は違うのではないのかという疑惑のことです。
というのも、テザーが1ドル=1USDTの価値を本当に持っているかどうかを第三者は知らず、Tether社もそれを証明するための努力をしていないからです。
そして、もう一つ厄介な点として、大量に新規発行されたテザーを使ってビットコインを購入し、価格を釣り上げているのではないのかという疑惑がテザーにはあります。
なぜこのような疑惑が起こったのかというと、テザーが大量に発行されるタイミングに合わせて、毎回ビットコインの価格が上がるという現象が起きているからです。
本来、テザーが新規発行されるのは、ドルと交換される時だけであるため、テザーの新規発行とビットコインの価格高騰との間に因果関係はないはずです。
にも関わらず、テザーが新規発行される度にビットコインの価格が上がるとなると、Tether社が意図的にテザーを大量発行し、それを使ってビットコインの価格が上げている可能性が高く、それがTether社に疑惑の目を向けられる要因となっているのです。
もちろん、テザーの大量発行に合わせて、ドルを追加で増しているのであれば問題はないです。しかし、もしもドルの裏付けがないにも関わらず、恣意的にテザーを大量発行し、それを使ってビットコインの価格を上げたとなると、テザーの信用はもちろん、ビットコインの信用すら失墜しかねません。
それを象徴するかのように、2018年1月から2月にかけて、テザー疑惑が持ち上がることでビットコインの価格が大暴落しました。
当時、200万円以上あったはずのビットコインは急落し、一時は60万円台まで落ちたほどです。
このテザー疑惑に付随して、仮想通貨取引所の大手であるBitfinexにも疑いの目を向けられています。というのも、ビットコインの価格高騰の背景には、Tether社とBitfinexが裏で繋がっていたからではないのかと思われているからです。
そのような疑惑があったからこそ、2017年12月にCFTCよりTether社とBitfinexの両方に召喚状が発せられ、公聴会にて意見を聞くことになりました。
その後、テザー疑惑は一応は解決を見せ、現在も1USDTは1ドルの価値を保証し続けています。
テザー(Tether)の今後・将来性
テザー疑惑など、不穏な噂こそありますが、テザーが仮想通貨業界にとって画期的な通貨であることに違いはありません。
ドルと同じ価値を有するテザーであれば、今後価格変動リスクに悩まされることなく、安心して送金することができます。テザー疑惑という黒い噂が無ければ、テザーは将来性のある仮想通貨です。
ただし、テザー疑惑の有無に関わらず、投資という意味では、テザーに将来性はありません。なぜなら、テザーは常にドルと同じ価値を持つペッグ通貨だからです。ペッグ通貨にいくら投資をしたところで、値上がりを期待することはできません。
むしろ、政策金利が無い分、デメリットが多いくらいです。
仮想通貨としては将来性がありますが、投資という一面においては今後価値が上がる可能性は全く無いため、投資という側面においてテザーを保有するメリットはほとんどないでしょう。
しかし、将来的に政府が本格的に仮想通貨の運用に乗り出した際に、テザーを始めとしたステーブルコインに注目が集まることは間違いありません。
仮想通貨の行方を占うという意味でも、注目のコインであることは疑いようがないでしょう。