2018年、仮想通貨の世界で話題になっている技術といえば、ライトニングネットワークが真っ先に挙げられます。
手数料がほぼゼロになり、取引の速度が格段に向上する夢の技術といわれており、理想的な決済手段といった話はあちこちで聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。
ここでは、ライトニングネットワークの仕組みやメリット・デメリットをご紹介します。
目次
ライトニングネットワークの仕組み
ライトニングネットワークの大きな特徴は、
ポイント
- ブロックチェーンの外で取引が行われる
- 二重支払から保護される
- マルチシグネチャによる安全対策
の3つです。
ブロックチェーンの外で取引が行われる
通常仮想通貨の売買を行う際、ブロックチェーン上に取引の記録を書き込む必要があります。
取引を公正かつ安全に行うために、ブロックチェーンに履歴を書き込むことは非常に重要ですが、多くのユーザーが同時に取引を行った場合、手数料の高騰と取引速度の低下が起きるという課題が浮き彫りになっています。
これを改善するために開発されているのが、ライトニングネットワークと呼ばれる仕組みです。
ペイトメントチャネルと呼ばれるライトニングネットワーク用口座への入金記録さえあれば、ブロックチェーンに取引を記録することなく、送金が可能です。これにより、手数料の高騰や取引速度の低下を心配せずとも取引をすることが可能になります。
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二重支払いから保護される
同じ支払いが同時に発生した場合は、一方のみの取引が自動的に選ばれて処理され、二重支払を防ぎます。
マルチシグネチャによる安全対策
ライトニングネットワークではペイメントチャネルと呼ばれる専用口座を、送金側と着金側の二つのアカウントで一つ作り、送金が行われます。
ここで問題となるのは、どちらかのアカウントによって共通する口座内のコインを盗んだり、ペイメントチャネルからいなくなったりしてしまうリスクです。
そこでマルチシグネチャというシステムが採用されています。これは、ペイメントチャネルの中にあるコインの利用金額をアカウント同士が前もって決めておき、ロックをする手法です。
もし引き出したいときはアカウント同士がそれぞれ持っている鍵を同時に使わないと引き出しできないという仕組みです。
ライトニングネットワークのメリットとは
ライトニングネットワークはビットコインに実装される高度な技術です。複雑な仕組みになっているため、イメージを浮かびやすくするため、メリットを見ていきましょう。
圧倒的な送金速度のスピードアップが可能
これまで以上に仮想通貨の送金スピードが加速します。仮想通貨のなかでは決済速度が速いビットコインの場合でも10分程度かかるところ、ライトニングネットワークが実装されるとウォレットから支払手続きをして約1秒で相手先に着金します。
仮想通貨の送金システムのベースとなっているブロック単位では10分間で1度のブロック生成になっているため、どうしても10分以上のタイムラグが生じてしまいますが、ライトニングネットワークは独自の送金システムで瞬時の送金が可能となります。
取引可能な処理量が巨大化
ライットニングネットワークを介する取引は1秒間につき1,000件以上もの膨大な処理が可能になります。
1秒間につき7件までしか送金できないビットコインの処理能力からすると桁違いです。
将来的には1秒間、万単位の件数を処理できる技術にまで発展することが見込まれています。1秒間約4500件のクレジットカード決済を超えるため、今後、ライトニングネットワークによる決済が主流になるのではと期待されています。
送金手数料が安くなる
ライトニングネットワークを利用した手数料は、ブロックチェーンのマイナー手数料のみ発生するため、手数料が非常に低くなります。
これは、ライトニングネットワークの決済処理は、処理件数をまとめて1回でブロックチェーンに記録するのみなので、ブロックチェーンのように処理件数ごとに手数料が発生しないのが強みです。
処理トラブルがなくなる
ライトニングネットワークはブロックチェーンを処理する場所とまったく別のところで行われます。
したがって、ライトニングネットワーク上の処理件数が膨大になっても、ブロックチェーンへの処理能力に影響を及ぼしません。
1円以下の少額決済が可能
1円以下の極めて少額な決済にも対応できるため、WEBサービスでの決済の広がりが期待できます。
たとえば、1クリックする、1ページだけサイトのページを読むといった細切れのWEBコンテンツの支払いがライトニングネットワークを使った仮想通貨で可能になります。
ライトニングネットワークのデメリットとは
ライトニングネットワークにはメリットが豊富な反面、さまざまなデメリットも含まれています。
安全性
ライトニングネットワークは、ブロックチェーンの処理場所と別になるため、セキュリティ面での対応が必要です。
いまのところ、ライトニングネットワークはハッキングなどに対するセキュリティ対策がどこまで実装されるか不透明な状況です。
したがって、当分の間は少額決済を中心とした利用を前提に推進されていくことになっています。
アカウントごとに手数料が変わる
ライトニングネットワークでは、送金側に隣接するアカウントが複数集まってまとまったお金をプールして、送金していきます。したがって、経由するアカウント数が増えるほどアカウントごとに手数料が発生して、送金額にプラスされます。
ここで注意したいのは、経由で発生する送金手数料はアカウントごとに自由に設定できるという点です。
つまり、経由Aアカウントでは手数料1円だけれど、次の経由Bアカウントでは10円となり、それが積み重なって最終的なトータル送金手数料になります。
少額決済にもかかわらず送金手数料が高く付いてしまう可能性がライトニングネットワークにはあるのです。
これは、クレジットカード決済が利用するカード会社の加盟店が負担してくれるのと大きく異なります。
経由する1回ごとの送金手数料はごく少額でも、送金される際に経由するアカウント数によってどれくらいの送金手数料になるか、また高額になるかどうかわからないのがネックです。
ハッキングのリスクが上がる
利用が始まってまだ日が浅いライトニングネットワークでは、研究開発時ではわからなかったバグやエラーの影響で大きなハッキングのリスクが残っています。
ブロックチェーンと別場所で送金プロセスが進むため、セキュリティ対策の範囲外となりハッキングのリスクも高くなるのです。
今後、ライトニングネットワークの取引が活発になればなるほど、セキュリティ対策がどこまで実現するかによってハッキングリスクの問題は常につきまとうことを忘れないようにしなければなりません。
ライトニングネットワークに処理が集中する
ライトニングネットワークの送金処理は、隣り合うアカウント同士でまとまったお金をプールして送金されていきます。
したがって、一度にまとまった金額をプールできる人ほど、有利な決済処理が可能になり、まとまった金額をプールできないユーザーは不利になる可能性があるとして懸念されています。
ライトニングネットワークの今後
ビットコインとは離れて送金取引が可能になるライトニングネットワーク。送金経由するアカウントごとに手数料が発生するため、手数料が割高になったり、セキュリティ対策がともなっていなかったり、依然として課題は山積みです。
ビットコインへの実装によって仮想通貨の取引がどこまで便利なっていくか、大きなポテンシャルを秘めているライトニングネットワークの今後の動きに注目が集まります。